地域別事例紹介

中 部               


平成21年度 農林水産祭
天皇杯受賞(水産・生活(多面的機能・環境保全))

▼平成5年に磯焼けで漁獲量激減!
 三重県鳥羽市にある答志島(とうしじま)は、鳥羽港から船で約20分のところにある人口3千人の県内最大の島です。答志島には、学校を卒業した男子が実家以外の民家に寝泊まりし、親子関係を結ぶ「寝屋子(ねやこ))制度」があり、独特な風習が残っています。
 島の周辺は、無数の天然礁や沖合には砂地が広がっているため、底引き網、定置網、巻き網など多種多様な漁業が盛んに行われています。しかし、平成5年頃から伊勢湾に面したところで、生息する海藻類が死んでしまう「磯焼け」という状況が目につくようになり、魚やアワビなどの貝類の収穫量が減ってきました。
 青壮年部部長の橋本さんも普段巻き網漁をしているので、自分が取っているコウナゴやチリメンジャコなどの小魚が少なくなっている事をその時実感していたそうです。
 そこで地元の青壮年部で、今から5年ほど前に「子どもの頃の海をもう一度取り戻そう!」と、20代後半から40代前半のおよそ40名の部員が立ち上がり、アラメの再生を試みました。
 橋本さんらが中心となり、鳥羽市の水産研究所に相談。するとアラメの種苗を使って、自分たちでアラメ場を造成する事ができるということがわかりました。

▼アラメの育成は失敗の連続・・・4年目にして初の成功
 当初は魚と違い海藻のアラメは、すぐに再生する事ができるのでは?と思われていました。しかし、はじめてみるとうまくアラメの種苗は根付かずに、失敗が続きました。
その失敗は例えば、
・ロープに巻きつけた種苗が流される
・数ヵ月後に造成したアラメが死んでしまう
・芽の部分を魚に食べられてしまうなど、
このような失敗を繰り返し、もうだめかもしれないと、意気消沈しかけた青壮年部のメンバーでしたが、年々アラメの種苗を改良し、ロープの代わりに石材にモルタルで針金を埋め込み、そこにアラメを取り付けることによりひとつの大きな問題を解消しました。
 また、アラメを守るためにネットを仕掛ける際、水中で作業がしやすいように、10名のメンバーが潜水士の資格を取得。自ら潜水作業ができるようになりました。これにより、毎回依頼していた潜水士のコストを節約でき、コスト削減にも役立ちました。 失敗続きだったアラメ造成も4年目におよそ500個の自然石を使って合計1,300本のアラメ造成に成功。新しく入れたアラメをつけた自然石は、1年後には1mを越えるまでに、育てる事ができました。

▼子どもたちに、自分たちが子供の時見た海を残したい
 昨年初めてアラメの完全な育成に成功した青壮年部。今年も新たに500株ほど天然石を使って、アラメの苗を根付かせる予定です。
 青壮年部の活動は休みの日を利用して行われますが、みんな積極的に行事等に参加しています。もともと青壮年部の結束力は強かったのですが、このアラメ場作りを通じてさらに、仲間のつながりが強くなりました。
 また、最近の活動では、地域の子供達が魚にふれる機会を多くしようと、青壮年部で「ヒラメの中間育成」を実施し、稚魚を子供達といっしょに海に放す活動もしています。当初は幼稚園生のみの活動でしたが、今では小学生まで輪が広がり、子供達もとても喜んでいるとのことです。最近では、橋本さん達曰く「その放流の成果として、確実にヒラメの収穫量が増えている。」と感じているそうです。
 最後に、青壮年部部長の橋本さんは「まだ自分達がやっているアラメ場づくりは、例えるなら、砂漠に木を植えてるような小さなレベルで、その成果はすぐに漁業に反映されないかもしれない。しかし、長い時間がかかるかもしれないが、自分たちの子ども達が大人になったとき、自分たちが子供の頃見た豊富な海にするため、これからも青壮年部一同頑張りたい!」と力強く語っていました。